HOME > 現役生日本史合格術 > 関連性のない語句の場所だけは知っている空欄補充型教科書学習

どのような学習法か

市販もしく空欄補充が施された日本史教科書。または学校や予備校・塾で配布される空欄補充のプリントに歴史語句を書き込み学習する方法。予備校・塾に関しては【予備校や塾で学習効率を悪くしてしまう日本史学習】で後述する。

どのような受験生層がこの学習を行っているか

予備校・塾に頼らない(経済的に頼れることのできない学生を多く抱えている)地域の高等学校の補習(0限もしくは7限目)もしくは社会科選択科目の教材として使用されることでこの学習法となっている現役生。予備校や塾には行かず自宅で浪人している受験生。

実際にこの学習法で効果を上げることができる受験生層

高2から日本史学習を始めることのできる比較的真面目で粘り強く勉強のできる生徒(2年以上日本史学習に時間を割くことのできる生徒)。比較的英語や国語などの他教科の偏差値が常に高く、かつ日本史学習に抵抗を感じずに長時間の学習を行っても苦痛に思わない生徒。

ここに気づけ!

この学習法は最初から詳細に箇所まで学習し、かつ一問一答的に歴史語句を覚えてしまおうというものである。長期間(最低2年間)にわたって自立的かつ自発的な学習を要求される学習法であり、さらに学習に際し他の学習法とは比較にならないほどの莫大な労力が必要となる。 また、覚えた知識の属性や関連性がなく得意な箇所とそうでない箇所の得点の差が大きくなることが多い。短期間では知識定着が最も中途半端でまだらになりやすい学習法である。

そして大変残念なことであるがこの莫大な労力と検証できない「努力・根性論」が結びつくことで難関私大突破に不可欠な学習法と勘違いされ補習や選択教科においてこの学習法を採用している高等学校が多い。

批判を恐れずに言えば、その学習法を絶対だと信じて生徒に行わせている方は受験日本史の指導のできない人である。先生方には反論もあるだろうがまず冷静に読んでほしい。私も教員時代にこれと同じような指導を「子供のためだ」と信じて行っていた時期があった。しかし、この学習法はあまりにも大きな負荷を生徒に与えている割には学習効果が上がらなかったのである。そのため多くの生徒は「やっているふり」をして対応し、教師側も空欄教科書やプリントに歴史語句を書かせていれば補習や授業の体裁が保てると考えてしまう。こうして多くの生徒は学力が全く向上しないどころか日本史に対する関心すら薄れていくのである。さらにつけ加えれば、この学習法では文化史と近現代の経済史は全く理解することができない。これでは父兄に対しても補習の意義が問われかねない事態となりうるのではないだろうか。

私自身が教職員あった経験から進級や単位認定をちらつかせながら強要した場合にのみこの学習法はある一定の効果を発揮する。逆に言えば、それができないのであれば短期間でこれを行う場合、他教科の学習時間すら削りながらほとんど学習効果を上げることのできない最も受験リクスの高い学習法なのである。有名難関私大を受験する地方の受験生に多浪生が多い原因のひとつはこの学習法にあるのではないかと私は考えている。

それでもこの学習法で学力を上げたいならこうやれ!

この学習法の欠点は語句だけを無機質に機械的に覚えることで、覚えた語句の属性と関連性を見失ってしまうことにある。だから常に全ての文脈と語句を関連づけながら学習しなければならない。学校で配布される資料集を活用し、あまり時間をかけずに多少の理屈づけを踏まえて学習を行ってもいいだろう。

また、文章全体を音読しながら、空欄箇所は音読と記述を繰り返すことで時間はかかるがかなり効果的な学習となる。しかし、これでも受験問題を解答できる学力をつけにはほど遠く、同時に問題集を並行して行い、問題文や解説文からその時代や分野をコンパクトに把握する必要がある。

また、この学習法では文化史と近現代の経済史を理解することができないので、予備校や塾などでこうした分野を補う必要がある。その予備校や塾の講師が空欄補充型のプリント授業を行っている場合があるので注意が必要である。講義を受講する前にその講師の授業スタイルを調べておく必要があるだろう。


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